日本の神社・神道、そして四季の風習や文化を世界に伝えるブログ。 古来から受け継がれてきた「八百万の神」の物語や祈りの形を、分かりやすく、やさしく紹介

重陽の節句(菊の節句)とは|9月9日の意味と神社での行事

四季と年中行事

9月に入っても、昼間の空気にはまだ夏の熱が残ります。けれど、夕方になると風の角が少しやわらぎ、花屋の店先には白や黄色の菊が少しずつ並びはじめます。その景色を見ると、季節は急に変わるのではなく、静かに足音を立てて近づいてくるのだと感じます。

その秋の入口にあるのが、「重陽の節句」です。重陽の節句は、9月9日に行われる五節句のひとつです。桃の節句や端午の節句、七夕に比べると、今では少し知られにくくなりましたが、古くは菊の花に長寿や清めの願いを重ね、無病息災を祈る大切な日とされてきました。

「重陽」という言葉は、はじめて見ると少し難しく感じるかもしれません。けれど、意味をひとつずつほどいていくと、そこには昔の人々が季節の変わり目をどう見つめ、体をいたわり、家族の無事を願ってきたのかが見えてきます。

この記事では、重陽の節句とは何か、なぜ9月9日なのか、なぜ「菊の節句」と呼ばれるのかを、初心者にも分かる言葉で整理します。あわせて、神社で行われる重陽神事や、現代の暮らしで無理なく取り入れる方法も紹介します。

私が神社の境内で菊の花を見かけるとき、そこには大きな願掛けというより、季節の節目に心身を整えようとする静かな祈りを感じます。重陽の節句もまた、そうした日本の年中行事のひとつとして受け止めると、9月9日の見え方が少しやさしく変わってくるはずです。

この記事で得られること

  • 重陽の節句とは何かを理解できる
  • 9月9日が特別な日とされた理由が分かる
  • 菊の節句と呼ばれる意味を知ることができる
  • 神社で行われる重陽神事の基本を整理できる
  • 現代の暮らしで重陽の節句を取り入れる方法を見直せる

第1章:重陽の節句とは何か

重陽の節句とは、9月9日に行われる年中行事です。「ちょうようのせっく」と読み、別名を「菊の節句」ともいいます。重陽という言葉を日常で聞く機会は多くありませんが、実は桃の節句や端午の節句、七夕と並ぶ五節句のひとつです。

五節句とは、季節の節目に邪気を祓い、健やかな暮らしを願う日として受け継がれてきた行事です。人日、上巳、端午、七夕、重陽の五つがあり、それぞれに植物や食べ物、祈りのかたちが結びついています。難しく見える言葉ですが、もともとは「季節の変わり目を大切にする日」と考えると分かりやすくなります。

重陽の節句は9月9日の年中行事

重陽の節句は、毎年9月9日にあたります。現代の暦では、まだ残暑が残る時期ですが、旧暦の9月9日は現在の10月ごろにあたり、菊が咲き、秋の実りが深まる季節でした。そのため、重陽の節句には菊を飾ったり、栗ご飯をいただいたりして、長寿や無病息災を願う風習が育まれてきました。

「節句」という言葉には、季節の節目という意味があります。季節が移り変わる時期は、昔の人々にとって、体調を崩しやすく、暮らしを整え直す大切な時期でもありました。そこで、植物の力や食の恵みをいただきながら、身を清め、家族の健康を願ったのです。

重陽の節句は、にぎやかに祝う行事というより、静かに秋を迎えるための節目です。私はこの行事を知るたびに、昔の人が暦の数字だけでなく、風の匂いや花の咲く時期、食卓にのぼる実りまでを一緒に見ていたのだと感じます。日々の暮らしと自然が、今よりもずっと近くにあったのでしょう。

五節句の中で見る重陽の節句

五節句には、1月7日の人日、3月3日の上巳、5月5日の端午、7月7日の七夕、そして9月9日の重陽があります。人日は七草、上巳は桃、端午は菖蒲、七夕は笹、重陽は菊というように、それぞれの節句には植物が深く関わっています。

このように見ると、重陽の節句は決して特別に孤立した行事ではありません。春から夏、そして秋へと続く節句の流れの中で、最後に位置する節目といえます。五節句は、季節ごとに暮らしを整え、自然の力に感謝し、心身の無事を願うための文化でもありました。

七夕もまた、五節句のひとつです。七夕と神社行事の関係について詳しく知りたい方は、七夕は神道と関係がある?織姫・彦星伝説と神社で行う七夕祭の意味もあわせて読むと、節句文化と神社のつながりが見えやすくなります。

現代で重陽の節句が知られにくい理由

重陽の節句は、五節句のひとつでありながら、桃の節句や七夕ほど広く知られていません。その理由のひとつに、旧暦と新暦の季節感のずれがあります。旧暦9月9日は、菊が咲き、秋の実りが感じられるころでした。しかし現在の9月9日は、地域によってはまだ夏の暑さが残り、菊の節句という実感を持ちにくい時期です。

また、ひな祭りや端午の節句のように、家庭で分かりやすく続けられる形が残りにくかったことも、重陽の節句が知られにくくなった理由のひとつでしょう。菊酒や被せ綿といった風習は、言葉としては美しいものの、現代の家庭でそのまま再現するには少し距離があります。

けれど、知られにくくなったからこそ、重陽の節句には学び直す価値があります。菊を一輪飾る、秋の食材をいただく、神社に静かに参拝する。そのような小さな形でも、季節の節目を意識することはできます。行事は大がかりに行うものだけではなく、暮らしの中でそっと思い出すことにも意味があるのです。

重陽の節句を知ることは、忘れられかけた秋の入口を、もう一度ていねいに見つめ直すことでもあります。

第2章:9月9日に重陽の節句を行う意味

重陽の節句を理解するうえで大切なのが、「なぜ9月9日なのか」という点です。9月9日は、ただ数字が並んでいる日ではありません。古代中国の陰陽思想を背景に、特別な力が重なる日として考えられてきました。

陰陽思想では、ものごとを陰と陽の性質でとらえる考え方があります。その中で、奇数は「陽」の数、偶数は「陰」の数とされました。そして、陽の数が重なる日は、強い節目として意識されたのです。難しく聞こえるかもしれませんが、「数字にも意味を見て、季節の変化を感じ取っていた」と考えると、少し身近に感じられます。

重陽とは「陽の数が重なる」という意味

「重陽」という言葉は、陽の数が重なることを意味します。9は一桁の奇数の中で最も大きい数です。その9が、月と日で重なる9月9日は、陽の力が重なる日として特別に見られました。

ただし、ここで大切なのは、9月9日を単純に「何でも良いことが起こる日」と考えないことです。古い暦の考え方では、強い力が重なる日は、めでたい日であると同時に、その力を清め、整える必要がある日とも受け止められました。だからこそ、邪気を祓い、無病息災を願う行事が行われたのです。

私はこの考え方に、日本の年中行事らしい慎みを感じます。強い日だから大きく願うのではなく、強い日だからこそ、身を整え、日々の無事に感謝する。重陽の節句には、そのような落ち着いた祈りの姿が見えてきます。

吉日であると同時に、清めが必要な日

重陽の節句は、めでたい日として語られることがあります。一方で、陽の数が重なりすぎることを強すぎる状態と見て、それを祓い清める日とする見方もあります。この二つは矛盾しているようで、実はどちらも季節の節目を大切にする感覚から生まれています。

季節の変わり目は、体調や暮らしのリズムが揺らぎやすい時期です。現在でも、夏の疲れが出やすい9月は、食事や睡眠を見直したくなる時期ではないでしょうか。昔の人々は、そのような変化を暦や行事に重ね、菊や食物、祈りを通じて心身を整えようとしました。

このため、重陽の節句を「必ず運が開ける日」として強く言い切るよりも、季節の節目に清めと感謝を意識する日として受け止めるほうが自然です。根拠のないご利益を約束するのではなく、文化としての意味をていねいに知ることが、この行事の静かな美しさに近づく道だと思います。

宮中行事から年中行事へ広がった重陽

重陽の節句は、中国由来の暦文化を背景に日本へ伝わった行事です。日本では奈良時代ごろから貴族の間で知られ、平安時代には宮中行事として取り入れられたとされています。宮中では、菊を眺めたり、菊を浮かべた酒をいただいたり、詩歌を楽しんだりする行事が行われました。

やがて重陽の節句は、宮中だけでなく、年中行事としても広がっていきます。菊を用いて長寿を願うこと、秋の実りを味わうこと、季節の変わり目に無病息災を祈ること。これらが結びつき、重陽の節句は「菊の節句」として日本の文化の中に根づいていきました。

神社を案内していると、行事の由来には複数の流れが重なっていることをよく感じます。中国から伝わった暦の考え方、宮中で整えられた儀式、日本各地の暮らしの中で続いてきた祈り。その重なりを分けて見ると、重陽の節句はより立体的に見えてきます。ひとつの言葉の奥に、長い時間が折り重なっているのです。

第3章:菊の節句に込められた長寿と清めの願い

重陽の節句は、「菊の節句」とも呼ばれます。菊は日本の秋を代表する花のひとつですが、重陽の節句においては、単なる季節の花ではありません。古くから、長寿や清め、邪気払いの象徴として受け止められてきました。

菊の花には、きりりとした香りがあります。その香りに清らかさを感じ、邪気を祓うものとして見た昔の人々の感覚は、現代の私たちにも少し分かる気がします。花を飾ることは、空間を整えることでもあり、目に入る景色を変えることでもあります。

なぜ重陽の節句は菊の節句と呼ばれるのか

重陽の節句が菊の節句と呼ばれるのは、菊が長寿や邪気払いの象徴とされてきたためです。古くは、菊には延寿の力があると考えられ、菊の花を飾ったり、菊を酒に浮かべたりして、健やかな暮らしを願いました。

ここで注意したいのは、菊そのものに現代医学的な効果を断定することではありません。重陽の節句で語られる菊の力は、文化的・信仰的な象徴として理解するのが適切です。菊の香り、姿、季節感に、昔の人々は清めや長寿への願いを重ねてきたのです。

私自身、秋の神社で菊の花を見かけると、華やかさよりも、背筋が少し伸びるような端正さを感じます。重陽の節句に菊が用いられた背景には、そのような花の印象も関わっているのかもしれません。静かに咲く花に、長く健やかに生きたいという願いを重ねる。その感覚は、今の私たちにもそっと届くものがあります。

菊酒と被せ綿に見る昔の人の祈り

重陽の節句の風習としてよく知られるものに、菊酒があります。菊の花を酒に浮かべ、長寿を願う風習です。この記事では、菊酒を文化的な行事食として紹介しますが、飲酒をすすめるものではありません。大切なのは、菊を通じて健やかな暮らしを願った人々の心を知ることです。

もうひとつ印象的なのが、被せ綿、または菊の着せ綿と呼ばれる風習です。これは、重陽の節句の前夜に菊の花へ綿をかぶせ、翌朝、菊の露や香りを移した綿で顔や体をぬぐい、若さや長寿を願ったとされるものです。現代の生活ではあまり見かけませんが、菊の香りを身に受けるという所作には、清めの感覚がよく表れています。

この風習を読むと、昔の人々が「香り」や「露」といった目に見えにくいものにも意味を見出していたことが分かります。神社の手水で水に触れるときにも感じますが、清めとは、汚れを物理的に落とすだけでなく、心を切り替える所作でもあります。被せ綿には、そのような節目の美しさがあります。朝の光の中で菊の香りを受け取る姿を思い浮かべると、とても静かで、ていねいな祈りだと感じます。

栗の節句としての重陽と秋の実り

重陽の節句は、菊の節句であると同時に、「栗の節句」とも呼ばれることがあります。旧暦9月9日は、現在の10月ごろにあたり、栗をはじめとする秋の実りの時期と重なりました。そのため、庶民の間では栗ご飯や栗のお菓子をいただき、収穫を祝う風習もあったとされています。

菊の節句というと、少し雅な宮中行事の印象があります。一方で、栗の節句という呼び方には、暮らしに近い温かさがあります。畑や山の実りをいただき、家族の健康を願う。そこには、神社での祈りと同じように、自然への感謝が流れています。

秋の実りや月への感謝という視点では、お月見(十五夜)の由来と神道|月読命(ツクヨミ)と収穫の感謝も、重陽の節句と近い季節の祈りとして読むことができます。重陽の節句とお月見を並べて見ると、秋という季節が、ただ涼しくなる時期ではなく、感謝と祈りを深める時期であることが分かります。

菊の香りと栗の甘み。そのどちらにも、秋を迎える人々の願いが静かに重ねられてきました。

第4章:神社で行われる重陽神事と烏相撲

重陽の節句は、中国由来の暦文化を背景に日本へ伝わった行事です。そのため、「神道だけを起源とする行事」と断定するのは正確ではありません。けれど、日本の中で長く受け継がれるうちに、神社の神事として行われている例もあります。

その代表的な例として知られているのが、京都の上賀茂神社、正式名称は賀茂別雷神社で行われる重陽神事と烏相撲です。神前に菊花を供え、延命長寿や災難除を祈る神事として紹介されています。

神社で見る重陽の節句のかたち

神社で行われる重陽の行事を見ると、重陽の節句が単なる暦の知識ではなく、祈りの場で受け継がれてきた文化であることが分かります。菊を神前に供えることは、季節の花を通じて神様へ敬意を示すことでもあります。

ただし、すべての神社で重陽神事が行われるわけではありません。神社にはそれぞれの由緒や地域の祭礼があり、9月9日の扱いも異なります。そのため、重陽の節句に神社へ行きたい場合は、行事の有無や開催時間を各神社の公式情報で確認することが大切です。

私は神社の年中行事を見るとき、いつも「この行事はどこから来て、どのようにこの土地に根づいたのだろう」と考えます。重陽の節句も、外から伝わった暦の文化が、日本の宮中行事や神社の祈り、地域の暮らしと重なって残ってきたものと見ると、その奥行きが感じられます。境内に置かれた季節の花は、ただ美しいだけでなく、その土地が受け継いできた時間を静かに語っているように思えます。

上賀茂神社の重陽神事とは

上賀茂神社の公式サイトでは、9月9日の重陽神事について、9という「陽」の最大数が重なることから重陽といわれ、当神社では神前に菊花を供え、延命長寿・災難除を祈願すると説明されています。また、境内では烏相撲の終了後に菊酒の接待があるとされています。

京都市公式観光Naviでも、上賀茂神社の重陽神事は、御神前に菊花を供え、延命長寿・災難除を祈願する神事として紹介されています。こうした情報から、上賀茂神社では、重陽の節句が菊の節句としての意味と、神前への祈りの形をあわせ持って受け継がれていることが分かります。

ただし、行事の時間や参列の扱い、接待の有無などは変更される可能性があります。参拝を考える場合は、必ず上賀茂神社の公式サイトや最新の案内を確認してください。年中行事の記事では、古くからの意味を伝えることと、現地の最新情報を確認することの両方が大切です。

烏相撲に込められた神事としての意味

上賀茂神社の重陽神事に続いて行われる烏相撲も、特徴的な神事として知られています。公式サイトでは、神事に引き続き、細殿前の土俵で刀禰による烏鳴きなどの所作が行われ、その後、児童による相撲の取組が奉納されると説明されています。

烏相撲の由緒には、上賀茂神社の御祭神の外祖父である賀茂建角身命が、神武天皇の東征に際して八咫烏となって先導したという故事が関わるとされています。ここでは、日本神話や伝承の世界と、現在の神社行事が重なっています。

私はこのような神事を見ると、神話が遠い昔の物語としてだけでなく、所作や祭礼の形を通じて、今も人々の前に現れていることを感じます。烏の鳴きまねや烏飛びの所作は、一見すると不思議に見えるかもしれません。けれど、その背景を知ると、そこには神話を身体で伝える祈りの形があるのです。言葉だけでは残りにくい記憶を、動きや声で受け継いできたところに、祭礼の深さがあります。

重陽神事を訪ねるときの心構え

重陽神事や烏相撲を見に行く場合は、観光イベントとして楽しむだけでなく、神前で行われる神事であることを意識したいところです。写真撮影の可否、立ち入りできる場所、参列の扱いなどは、その場の案内に従いましょう。

また、菊酒の接待などが案内される場合でも、この記事では文化的な紹介に留めます。飲酒に関しては年齢や体質、状況によって判断が必要です。重陽の節句の本質は、菊酒をいただくことそのものよりも、季節の節目に長寿や無病息災を願う心にあります。

神社の境内で神事を待つ時間には、独特の静けさがあります。二の鳥居の内側に入ると、日常の時間が少しだけゆるみ、足元の砂利の音や木々の影が心に残ります。重陽の節句も、そのような場で見ると、暦の上の知識から、祈りの実感へと変わっていきます。菊の花を前にして手を合わせる時間は、今を生きる私たちにとっても、心を整える小さな節目になるのだと思います。

第5章:現代の暮らしで重陽の節句を静かに取り入れる

重陽の節句を知ったとき、「では、現代の私たちは何をすればよいのだろう」と思う方もいるかもしれません。古い作法をすべて再現する必要はありません。むしろ大切なのは、重陽の節句に込められた長寿、無病息災、清め、秋の実りへの感謝を、今の暮らしに合う形で受け止めることです。

行事は、完璧に行わなければ意味がないものではありません。菊を一輪飾る。栗ご飯をいただく。近くの神社に参拝する。夏の疲れを見直し、秋に向けて生活を整える。そのような小さな所作の中にも、重陽の節句の心は宿ります。

菊を飾り、秋の節目を意識する

重陽の節句を家庭で取り入れるなら、まずは菊を一輪飾ることから始めてもよいでしょう。白や黄色、淡い紫の菊を部屋に置くだけで、空間の空気が少し引き締まります。菊は仏花の印象を持たれることもありますが、古くから長寿や清めの象徴としても親しまれてきた花です。

ただし、「菊を飾れば必ず運が開ける」といった表現は避けたいところです。重陽の節句で菊を飾る意味は、何かを保証するものではなく、季節の節目を意識し、心を整えるためのものです。花を飾ることで、日々の暮らしの中に小さな余白が生まれます。

私も季節の花を部屋に置くと、忙しい日でも一度立ち止まる時間ができます。水を替える、しおれた葉を取る、花の向きを少し整える。その小さな手間の中で、自分の心の乱れにも気づくことがあります。重陽の節句の菊も、そのように「暮らしの呼吸を整える花」として受け止めると、現代でも自然に取り入れられるのではないでしょうか。

栗ご飯や秋の食材で実りに感謝する

重陽の節句は、栗の節句とも呼ばれてきました。旧暦の9月9日は秋の収穫期にあたり、栗ご飯や栗のお菓子をいただく風習がありました。現代でも、9月から10月にかけて栗やさつまいも、きのこ、新米などの秋の食材が食卓に並びます。

こうした食材をいただくとき、「今年も秋の実りをいただいている」と少し意識するだけで、食卓の意味が変わります。神道では、食べ物は自然の恵みであり、神様への感謝と深く結びついています。重陽の節句をきっかけに、食べることそのものを感謝の所作として見直すのもよいでしょう。

家族で栗ご飯をいただきながら、「今日は重陽の節句という日なんだよ」と話すだけでも、行事は暮らしの中に戻ってきます。大げさな準備をしなくても、季節の名前を知り、食卓で共有することが、文化を受け継ぐ第一歩になります。湯気の立つご飯の前で、秋が来たことを静かに感じる時間もまた、祈りに近いものだと私は思います。

神社へ参拝するときに大切にしたいこと

重陽の節句に神社へ参拝する場合、必ず重陽神事がある神社を探さなければならないわけではありません。近くの氏神様や、ふだんから親しんでいる神社へ静かに参拝し、日々の健康と無事に感謝するだけでも、十分に意味のある時間になります。

もし重陽神事や菊にまつわる行事が行われる神社へ行く場合は、公式サイトで日時や参列の可否を確認しましょう。年中行事は天候や神社の都合によって変更されることもあります。古い行事を訪ねるときほど、最新情報を確認し、現地の案内に従う姿勢が大切です。

重陽の節句に込められた邪気払いの考え方をより深く知りたい方は、清めと祓いは何が違うのか|日常に取り入れる「塩・水・言葉」の基本も参考になります。菊の香りや水の清め、言葉を整えることは、どれも日常の中で心身を切り替える手がかりになります。

古い作法を無理なく現代に生かす

重陽の節句の風習には、菊酒や被せ綿など、現代ではそのまま行うのが難しいものもあります。だからといって、重陽の節句が私たちの暮らしから完全に遠いものになるわけではありません。古い作法の奥にある意味を知れば、今の生活に合わせた形で受け継ぐことができます。

たとえば、菊酒の風習は、菊に長寿の願いを込めた文化として知る。被せ綿は、香りと露で身を清める古い所作として学ぶ。栗の節句は、秋の実りへの感謝として食卓に取り入れる。このように、行事の形をそのまま再現するよりも、意味を理解して生活に落とし込むことが大切です。

重陽の節句は、忘れられかけた行事かもしれません。けれど、忙しい現代だからこそ、9月9日に少し立ち止まり、体をいたわり、秋の実りに感謝し、心を整える時間を持つことには意味があります。古い節句は、過去のものではなく、今の暮らしを静かに見直す鏡にもなるのです。

まとめ:重陽の節句は、秋の入口に長寿と清めを願う日

重陽の節句は、9月9日に行われる五節句のひとつです。奇数を陽の数と見る考え方の中で、9という大きな陽の数が重なる日として特別に受け止められてきました。そして、その強い節目を清め、長寿や無病息災を願う行事として、日本の文化の中に根づいていきました。

重陽の節句が「菊の節句」と呼ばれるのは、菊が長寿や邪気払いの象徴とされてきたためです。菊酒、被せ綿、菊湯といった風習には、菊の香りや露に清めの意味を見出した昔の人々の感覚が表れています。また、旧暦では秋の収穫期と重なったことから、栗の節句として秋の実りを祝う側面もありました。

神社行事としては、上賀茂神社の重陽神事や烏相撲がよく知られています。神前に菊花を供え、延命長寿や災難除を祈る神事を見ると、重陽の節句が単なる暦の知識ではなく、人々の祈りとして受け継がれてきたことが分かります。

現代の暮らしでは、菊を一輪飾る、栗ご飯をいただく、神社へ参拝する、夏の疲れを見直すなど、無理のない形で重陽の節句を取り入れることができます。大切なのは、古い作法を完璧に再現することではなく、その奥にある長寿、清め、感謝の心を受け止めることです。

9月9日に菊の花を見かけたら、昔の人々がそこに重ねた願いを、少しだけ思い出してみてください。重陽の節句は、秋の入口で心身を整え、日々の無事に静かに感謝するための、やさしい節目なのだと思います。菊の花の前で一呼吸おくように、私たちの暮らしにも、そんな小さな祈りの時間を残しておきたいものです。

FAQ

Q:重陽の節句とは何ですか?

A:重陽の節句は、9月9日に行われる五節句のひとつです。陽の数とされる奇数の9が重なる日で、古くから長寿や無病息災、邪気払いを願う日とされてきました。

Q:なぜ重陽の節句は菊の節句と呼ばれるのですか?

A:菊が長寿や邪気払いの象徴と考えられてきたためです。重陽の節句には、菊を飾ったり、菊酒や被せ綿などの風習を通じて、健やかな暮らしを願いました。

Q:重陽の節句には何をするのですか?

A:古くは菊酒、被せ綿、菊湯、栗ご飯などの風習がありました。現代では、菊を飾る、秋の食材をいただく、神社へ参拝するなど、無理のない形で季節の節目を意識するとよいでしょう。

Q:重陽の節句は神社と関係がありますか?

A:重陽の節句そのものは中国由来の暦文化を背景にしていますが、日本では神社行事として受け継がれている例もあります。京都の上賀茂神社では、重陽神事や烏相撲が知られています。

Q:重陽の節句に参拝するときの注意点はありますか?

A:すべての神社で重陽神事が行われるわけではありません。行事の有無や日時は神社ごとに異なるため、参拝前に公式情報を確認し、静かに日々の無事や健康への感謝を伝える気持ちで参拝するとよいでしょう。

参考情報ソース

  • 農林水産省「和食文化情報発信中」
    URL:https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/attach/pdf/index-90.pdf
  • 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「重陽の節句の由来と重陽の節句に菊を使う理由についてわかりやすく載っている児童書が見たい。」
    URL:https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000296091&page=ref_view
  • 京都市公式観光Navi「重陽の節句」
    URL:https://ja.kyoto.travel/event/season/september/
  • 京都市公式観光Navi「重陽神事と烏相撲【上賀茂神社】」
    URL:https://ja.kyoto.travel/event/single.php?event_id=4822
  • 賀茂別雷神社(上賀茂神社)公式Webサイト「上賀茂神社のひととせ」
    URL:https://www.kamigamojinja.jp/hitotose/

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